人間は犯しがちな傾向があるからね。えばれる立場を作ってしまうと、人は暴走しがち、暴君になる可能性を持っているんだよ。それを僕らは歴史から知っているんだ。独裁者は誰でも嫌だろう。誰もえばられたくないよね。そして、危険だよね。星人の幸福を考えた時、平等は幸福の一つの大きな構成要素だとわかったんだ。えばることを誰にも許さない。僕らがこうして腰かけていることは、僕らの決意の象徴なんだ。対等であることを、対等であり続けていくことを表しているんだよ」
「・・・」
「ネド、君は時々不満に思っているようだが、まだ、ケネス星人としては成人に達していないよね。もともとケネス星人は長命な民族だったから、他星と比べると、成人とみなされるのは、ずいぶん後になっている。でも僕は、この時期にもう一度、君に外からこのケネス星をみてほしいんだ。そして、この星の、僕らの根幹となっているもの、そして、それが集約されたケネス教育プログラムも、見直して、深く理解してほしいと思っているんだ」
「わかりました」
「そして、もう一つ。これを言おうと思っていたんだ。無謀なことはしないと誓ってほしい。協力が必要な事態になったら、すぐに協力を仰ぎなさい」
「わかりました」
ここで、執事が、ケネス星最高司令官サライが来たと告げた。
「お話し中でしょうか?」
「いや、もう、ひと段落着いたところだよ」
ネドはサッと立ち上がった。
「サライ最高司令官、この度は」
「僕はいいよ。ただ、危ないことはしないでくれ。これだけは守ってくれ。それだけだ」
ネドはため息をついた。
「渋い顔をしなさんな。何か食べに行こう。総統、この近くに、レストランが新装開店したのご存知ですか?おいしいと評判なんですが。ご一緒していただけませんか?」
「おやおや、実は僕もそこに行こうかと思っていたんだ。ネド、行こう」
この後、ネドは商務省のフェレル長官にアポイントを取った。謝りに行ったのはいうまでもない。
そして、タパの町の人買い商人に獲られたネドの3200ベシラは、ケネスの星立銀行がラムル総統の許可のもと、転送回収し、ネドの口座に無事戻ったのだった。
そして、後日談がある。
ケネス宇宙艦ギガの副長シリス中佐から通信が入った。
今度ケネスに帰る時があったら、連絡がほしい、ケネス宇宙軍本部の射撃練習場で待ち合わせをしないかとのことだった。
ケネスの射撃練習場では、宇宙連邦内のあらゆる惑星の銃が練習できる。