ただ、今から思えば、ミュール星の衛星通信は、全て軍が握っている。民間の参入は無く、その為、情報操作がされていたのか。それとも、一般の通信は有線に限られている為、もともと星外に出る電波による情報は限られたものだったのか。のちの検討課題である。
ケネス艦ギガを取り囲んだミュール船から、ついに攻撃が開始された。
左前腕からもたらされる情報に、4人は釘付けになった。
別室に行ったキャプテン、キースはどうなっているのだろう。
その頃、キャプテン、キースは、非協力を理由に殴られ続けていた。
「お前、早く命じろ。何をしているんだ」
ガシ
「早く、お前の船をアトス(ミュールの月)に着陸させろ!」
キースはイスに括り付けられていて、そばには旧式のカメラが置かれている。
この状況を撮影し、衛星通信でケネス艦ギガに向けて送り付けていた。
キャプテン、キースは殴られ続けた。
顔は腫れあがり、唇は切れて血が流れた。
この時、別の部屋では、ミュールの軍医がこの施設の長官に切羽詰まった顔で、話をしていた。
「長官、お願いです。あの宇宙人を私に調べさせてもらえませんか」
「後にしてくれ。今は大事な時だ。軍司令官に今はお願いできない」
「1時間もかかりません。アトスに着陸した後では、生きている状態で調べられるかどうかわかりません。時間は取りませんから、なんとか今、私に調べさせてもらえませんか?」
「うーん」
「お願いです」
「・・・」
この部屋の外の廊下の天井付近で、ケネスの器械が透明スクリーンをかけた状態で浮かんでいた。この音声も、ケネス側へそのまま流された。
捕らわれたケネスの上陸チームのSEが盛んにこの器械を多数、左前腕でコンピューターに指示を出しながら、ミュールの地上に飛ばしていたのだ。
この星の主要な建物の内部にはもう、設置が済んでいた。
さて、ネドはというと、もう、のどが渇いてイライラし始めていた。
事態は膠着状態である。ギガは止まったまま動かず、ミュールのクラシックな砲撃にさらされていた。当然、防御スクリーンが張られていて何ら損傷はない。
しかし、キャプテンは帰って来ない。
それにしても、ケネス宇宙軍なのだから、転送で引きあげて、この星を後にすればよいだけの話である。
何をしているのか。ネドのイライラがつのった。