「彼は大丈夫ですよ」
とニッコリ付け加えると、ストレッチャーを先導するように、マシアスは部屋の出口へ向かった。
「私も行くよ」
「僕も」
出口付近で、3人は研究所の職員たちに振り返った。
「ところで、高速平面移動ボックスは、どこから乗るのかな?」
説明する声と歓声とが入り混じった。騒音のように渦巻いた。
ケネス宇宙軍本部のコントロールルームも、ケネス艦ギガのコントロールルームも、歓声が渦巻いた。安堵の興奮が、ケネス星中に渦巻いた。
緊急通信が切られていないため、最高司令官サライの左前腕の器械を通して、ネドの無事がケネス中に知らされたのだった。
少しあと、ケネス宇宙軍本部の医務室のベッドで眠っているネドの傍に、サライ最高司令官の姿があった。
その少し前にラムル総統は、先に帰るよ、とサライに声をかけて、自分の家に引き上げて行った。
「じゃまかな?」
少し離れたところで、自分のパソコンを出して、なにやら入力しているドクター、マシアスに、サライは声をかけた。
「いえ、全然。私のことは気になさらないで、大丈夫ですよ。私は今日はここにいますし、眠くなったら、ドクター、スプームを呼びますから」
「そうか」
「それより、最高司令官、大丈夫ですか?」
「ああ、もちろん。ちょっと考えているだけだ。彼のそばでね」
「それにしても無事でよかった。彼はどこにいたんでしょうね。少し眠ってもらってから、彼に聞いてみますが」
「あっ、その時は僕を呼んでくれないか」
「もちろんです」
「しかし、本当にどこにいたんだろうねえ。僕は、なんだか僕が関係している気がしてならないんだ」
「え?」
「未来のケネス星が、この件に絡んでいるような気がしてならないんだ。おそらくね」
「?」
「いや、確信があるわけじゃない。さあて、僕もそろそろ帰るよ。彼は無事だったんだしね」
「最高司令官。案外、未来のケネスが絡んでいるかもしれませんよ。ネドは完璧な形で、ここに戻ってきました。完璧です。少しは彼の体に気になるところがあったんです。でも、完璧で戻ってきました。なんだか僕は、僕自身がこの件にかんでいるような気がしてきましたよ」