ネド以外の士官のSE二人は、盛んにコンピューターに命じて作業をしているようである。
商業交渉にSE2名とはなぜとネドは疑問に思っていたのだが、どんな仕事があるのか。
彼らは淡々と作業を続けているようである。
ネド(僕)だけが、ぽつんと何もすることがなく、とり残されたようである。
ネドは隣に座ったキャプテン、キースの小声を、耳を澄ませてなんとか聞き取ろうとしてみた。
「こちらは出方を見てみる。危険があれば、直ちに転送でそちらに戻るよ。ところで、そちらは変わったことは無いか?」
「・・・」
「シリス、シリス、副長、どうした?え?防御スクリーン強化と言ったのか?」
「失礼しました。キャプテン。3隻のミュール船がこちらに近づいてきています。近くに停止しているのはわかっていたのですが、今、動き出しました。このままですと間もなく囲まれます」
外の通路で、ガサガサと複数の人間の足音がした。
近づいて来る。
留置所の前で、止まった。
「シリス、一旦切る。気を付けてくれ」
「了解です」
鍵をガチャリと開けて、5名の白い防護服姿の武装した軍人が入ってきた。
そのうちの4人は銃をこちらに向けて構え、そして、1名は鉄格子の鍵を開けた。
キャプテンが、彼らの視界からネドを塞ぐように、ネドの前に立った。
「お前、お前だ。来い!」
「ほかのものは動くな!」
「早くしろ!」
「早く出てこい!」
キャプテンを連れて行くつもりだ。
キャプテンは後を頼むというように、目線で一人の士官に合図を送った。
そして、キャプテンは顔色を変えずに、平然と従った。
キャプテン、キースは連行されて行った。
そして、キャプテンは、なかなか戻って来なかった。
残った4人は、時々左前腕を触って、緊急通信で流されているギガの情報を見ていた。
初めて他星の船の訪問を受けた場合、訪問された側の星の対応は、二極に分かれると思われる。
拒絶か、歓迎か。
ミュールは少なくとも後者で、友好関係を築こうとしていたはずである。
ミュール星近くに置いてある、ケネスの小型衛星から受け取ってきたミュール星の情報(星外を流れる通信からの情報)は、今回の事態を予想させるものではなかった。