第9章(終章)(欠けた茶碗)
ネドはケネス星にいた。
休みなさい、とおじいさんに言われたこともあったが、ここで、これからのことを考えたかった。
それで、ドクター、ネプスには申し訳ないが、体調が戻ってからもすぐには宇宙連邦軍宇宙艦テラには戻らず、この母星ケネスで少し休暇を取ることにしたのだった。
あれからハボス星は、何も言ってこない。
両星の関係にとってそれが良い事なのか、いや、ハボス星にとって良い事なのかどうかは、わからない。だが今のところ、我々ケネスとしては、動きようがない。
僕にはやることがある。
惑星Zの宇宙基地に今も置いてある精神波増幅装置を、見に行こう。
自分がどういう気持ちになるか、見てみたかった。
その機械がかつて置かれていた巨大移民船の、唯一の生き残りとして。
ケネス星人なら、憎んでも憎み切れない男の造った機械である。
いや、この表現は当たらないな。
我々はケネス星人だ。
彼は精神を病んでいたと言われている。
この増幅装置の発見で、遂にあのケネス星史上最大の事故の謎が解明された。
行方不明となったあの大型船自体が、大捜索にもかかわらず、なかなか発見されなかった事と、遂に発見されたその船の損傷が激しく、しかも中枢の情報系統が破壊されてしまっていたため、誰が破壊したのかも何が起きたかもわからなかったのである。
その事件後、昔のケネス星から次々と、残りのケネス星人はすべて、この新しいケネス星へ移民してきたのだった。
そう、今の、この新しいケネス星へ。