人間が集まって生きて行くには、組織が必要となり、立場の差を生む。しかし、立場によって、命の大切さに差が出るということは、あってはならないことである、と星人全てが自覚しているケネスは、本当に特殊な星なのである。人間の思考が陥りがちな傾向に気づいて、気が付かないうちに受け入れてしまう怖さに気づいて、それに警鐘を鳴らしたケネスは、本当に稀な星なのだと、改めてネドは思ったのであった。
第六章(試練とは)
ネドは夢を見ていた。
気が付くと周りは銀色の壁である。
恐怖が襲ってきて、ここを出なければと思うのだが、腕が上がらない。足を動かそうと思って力を入れてみるが、動かない。
声を出そうと思うのだが、声が出せない。
どうしよう。息苦しい。
はっと、気が付いて眼が開いた。天井を見ると、宇宙連邦軍宇宙艦テラの自分の部屋である。
また、同じ夢を見た。昨日は疲れていたからかなあ。疲れると同じ夢を見る。
ネドはシャワーを浴びて、制服に着替え、いつものように食堂へ行った。
ミランが窓際のテーブルで食べている。
「おはよう、ミラン」
「おはようございます。ネド中尉」
「そうだ、おめでとう、ミラン中尉」
「恥ずかしいです。聞いたのですか」
「ああ、ミランも中尉か」
「ええ。僕も驚きました」
「そんなことないでしょ。卒業は僕と一年しか違わないんだから」
「ですが、ゼルダ星人ですからね。僕は、このあいだの救出作戦の成功が、上層部で認められたのではないかと思っているんです」
「うーん、ま、あり得るね」
「ところで、今年も新人がそろそろ配属になりますよ」
「ああ、そうだね」
「一人、変わったやつが入るって聞いてますか?」
「いいや、僕はいつも噂には疎いからね」
「いや、僕も早い方ではないですが、その新人が、すごい経歴のやつで、なんで宇宙連邦軍に入ったのか、ともっぱらの評判なんです」
「ふーん。で、地球人なの?」