ケネス星の社会は縦の社会という地球人的社会通念とは全く異なっている。専門性を重視していて、プライドも高く、横の専門職同士の連携が非常に強い。艦のSEは、本部や他の艦のSEの補佐にすぐに入るようになっている。また、管理職も、ケネスでは専門職の一つと捉えられている。
「ギーア船のコンピューター掌握が完了したら、ギーア船内の通路に通じる扉を全て一旦ロックしてくれ」(これで部屋の中にいるギーア星人が通路へ出れなくするのである)
最高司令官サライの声である。
「了解」
「キャプテン、キース」
ギガの通信士官がキースに呼びかけた。
「なんだ」
「ギーアの宇宙基地が船を出す準備を始めているようです」
「わかった」
本部でも同じ報告がされたようだ。
「わかった」
サライ最高司令官の声が入る。
「キャプテン、キース」
「はい、キースです。最高司令官」
「救出部隊の準備はできているか」
「はい、できています。いつでも侵入させられます」
「わかった。今、侵入ポイントを光らせたが、どうかな。何かあれば言ってくれ」
ネドは思わず立ち上がった。
僕にはテラの調査船のリーダーとして責任がある。
「キャプテン、キース」
ネドの緊迫した声に、キャプテン、キースが振り向いた。
「私をギーア船に侵入させてください。私は調査船メンバーに対し、責任があります」
「ネド、気持ちはわかるが、精鋭部隊だけで行った方が危険が少ないと思う。見ていてくれ」
ネドは暗澹たる気持ちになった。
「ネド」
シリス副長が、ネドをイスに座らせた。
その時、ネドは思わず左前腕を触った。
「ギーア船の捕虜の所へ」
とネドが小声で言うと、ネドはキラキラ光に包まれた。
「ネド!」
驚いたシリス副長の声がギガのコントロールルームに響いた。
ネドはすぐに、ギーア船内の、現在ケネスのコンピューターが把握している、宇宙連邦軍の捕虜が収容されている留置所の近くに、転送された。