「訂正していただいて、ありがとう、マシアス」
ネプスは、ドクター、マシアスに目線を向けて礼を言うと、話を続けた。
「僕らの社会では、あの当時でさえ留置所も存在していなかった。つまり、あの船の中では武器を携行した保安員は一人もいなかったんだよ」
「そう、武器は武器庫にしまわれていただけだった」
「管理も厳重ではなかった」
二人の会話の中にネドが入った。
「だからあの精神科医が、狂った男が、簡単に武器を持ち出すことができた」
「その通りだ」
「なにしろ、僕らはケネス星人だからね。僕らで僕らを傷つけるなんて、考えもしなかった」
「あり得ないことだった」
「だから、油断することを止めたと言ったんだね」
「その通り」
「で、見てみてどうだい?」
「うーん、古い機械だな、としか感じないな」
「そうか」
ネドは、その言葉に片眉を上げた。
「僕が何かすると思ったのかな?」
「いや」
とネプスは言って、部屋を出ようというように、さあとネドの背中に腕を回してドアに誘った。
小部屋のドアを閉めると、
「これからどうする?ネド」
マシアスが聞いた。
「そうだね、ケネスでの久しぶりの休暇だし、博物館にでも行こうかな」
ネドはすぐに、二人の前に自分の両手のひらを上げて見せた。
「僕一人で行くからね。ちょっと一人になりたいんだ」
惑星Zの宇宙基地の転送室から、ケネス星のケネス宇宙軍本部の転送室へ、公式のルートで戻ってから、ネドは二人と別れてケネス星の王立博物館へ行った。ただ、ノードが一緒だが。
ここは、他星人には入れない制限区域になっている。
花が咲いた公園のような庭を通って、荘厳な建物の中へ入って行った。
慣れたように展示品の中を抜けて、奥へ入っていく。
あった。ネドは立ち止まった。大きな金属の残骸に目をやった。そこはあの移民船の残骸の一部が展示されているのだ。