ネドが動く。ネドが駆けた。ドルーを抑えようとドルーに飛びかかろうとした士官を右に突き飛ばし、その勢いでネドがドルーの傍に倒れ込むのが見えた。機械の作動音とともに、ネドの姿が消えた。ドルーとともに。一瞬の出来事だった。
ネドの宇宙連邦軍での行動については、最近ケネス星内で宇宙連邦軍に対する批判の声が強くなっている為、星人の関心が高く、戦闘態勢コードが発生した場合には、星人の誰もが送られてくる画像を見ることが可能になっていた。
ネドが画面から消えた。
ネドが消えてしまった!
機械を動かした人物とともに、機械ごと消えてしまった。
サライ最高司令官も、ラムル総統も、キャプテン、キースも、シリス副長も、ドクターマシアスも、ネドが士官を右手に突き飛ばした直後に、
「ネドにQ」
と叫んでいた。
誰の声に、ケネスのコンピューターが反応したのか、それとも、すでに座標をロックしていたため、ギガのコントロールルームのSEが、パネルをタッチして作動させた方が早かったのか。
「ネドはどこだ」
キャプテン、キースの鋭い声がケネス艦ギガのコントロールルームに響いた。
同時に、本部では、サライ最高司令官の声が、本部のコントロールルームに響いた。
「ネドはどこだ!」
すぐに応えるものがいない。応える声が、どこからも返えってこない。
「ネドはどこだ。Qコードは作動したのか」
本部でサライが続ける。
静寂が続いた。
やがて、
「Qコードは作動はしています。しているのですが、探しましたが、ネド中尉はどこにもいません」
「いない?」
「いません。捉えられません」
応えた本部のコントロールルームの士官の声が、そのまま、導通しているギガのコントロールルームに響いている。
ほぼ全てのケネス星人の顔が引きつった瞬間だった。
正面スクリーンは、まだ洞窟の中を映していた。薄暗い洞窟の中で、宇宙連邦軍の士官たちや、リーダーが呆然としている姿が映っている。その後すぐに、彼らは動き出して、機械のあった場所に痕跡がないか、うろうろと確かめるように歩き回り始めた。
サライ最高司令官が固まった。脇で見ていたラムル総統も固まった。
ほぼ全てのケネス星人が、固まった。
(ケネスでは、ネドの世代が、ネドだけとなっているため、ネドは小さい時から、ネドの映像が星全体に配信されてきた。それをネドが嫌がった時期があり、配信は停止されていた。しかし、この今回Bコードが発せられた時は、ほぼ全てのケネス星人が、配信されている映像を見ていたのだった)