このケネスの大型の宇宙基地には、その中に、ケネス宇宙軍本部の補助的存在である転送機が置かれている。
ここから、ケネス宇宙軍本部の転送室へそのまま転送で帰り、長期休暇に入る乗員もいる。
このような大型宇宙基地は、宇宙連邦内に数ヶ所設置されている。
基地に着いて、すっかり良くなったネドが着替えを終えた時、ドクター、マシアスが真顔で近づいてきた。
「ネド、君は今は健康体に戻ったし、私の今回の任務は終わりとなったが、ただ、一つだけ言ってもいいかな」
「・・」
「そう、渋い顔しなくてもいいよ。ただ、今回、ムチの当たり所が悪ければ、いや、もっと強くムチを振るわれていたら、君の背骨が砕けていたかもしれないよ。今回は、運が良かっただけだ。君は僕らの中で育ったために、自分の体を過信している時がある。君が想定している7割ぐらいで、君は僕らでさえ治せないほどの障害を負うかもしれないし、悪ければ命を落とすかもしれない。僕らの医学をもってしても死んだ人間を生き返らすことはできないよ。いいかい、君の想定の7割で、君の肉体は重大な危機に陥る可能性があることを覚えておいてほしいんだ」
ドクター、マシアスの真剣な目を見て、ネドは深く頷いたのだった。
ネドは惑星Zの宇宙基地の転送室から、ケネス星のケネス宇宙軍本部の転送室へと転送移動した。
本部の転送室の扉を出ると、執事のノードが立っていた。
「やあ」
「お帰りなさいませ」
「うん」
「おじいさまがお待ちです」
「執務室?」
「いいえ、今、神殿の方にいらっしゃいます」
ネドの家はこのケネスの王家である。代々、もう、ケネスの歴史が始まったころに近いくらい古くから続いている家である。この家は代々神官も務めてきた。
ネドの祖父はこのケネス星の王としてその地位を継いだが、王と言う名を祖父は嫌い、総統と称したのだった。
高速平面移動ボックスで神殿の近くまで行き、外に出ると、公園のような整備された庭が続いている。ケネスの柔らかい陽がキラキラ注いでいる。
ノードと二人、奥の白い大きな建物、ケネス星の神殿の中に入った。
神殿は、中にも日差しがはいるように設計されていて、厳かだが排他的ではなく、ぬくもりが感じられるようになっている。