「僕だ。ドルー伍長。ネド中尉だ」
「ネド中尉」
「そうだ。ドルー。それは君の機械なのか?」
「そうだ。私の機械だ。僕が作った」
「最初から、それが目的だったのか?」
「違うとも、そうとも言える。僕は、ここに、この時代に来た時、記憶を失っていたんだ」
「この時代? タイムマシンなのか?それは」
ここで、洞窟の元来た方向から、声が響いてきた。
「誰だ!そっちに入っていったのか! 勝手に行動するな!」
リーダーの声だ。続いて複数の足音が聞こえてきた。
ジョリ
ジョリ
(これは)来るな。
目の前の、ドルーの顔が、はっとしたように変わった。
くるりとネドに背を向けると、機械をいじりだした。
「ドルー、何をしているんだ」
「うるさい。僕はこの機械を、ここで見つけさせるわけにはいかないんだ」
あっ、機械が作動し始めたようだ。操作パネルと思われるものの光の点滅が始まった。
足音が近づいた。
複数の人間のライトがあたりを明るくした。
「何をしている!」
リーダーの怒鳴り声が洞窟内に響いた。
「何をしようとしているんだ。それを止めろ!」
更にリーダーが言った。
入って来た士官の一人が、ドルーを抑えようとドルーに突進した。
全てが、一瞬にして起きた。
ネドはスローモーションを見ているようだった。僕の体が動いた。ドルーに向かって駆けた。
僕はドルーに近寄った士官を右に突き飛ばした。その勢いのまま、前に向かって倒れた。
そして、すぐに血が逆流するような不快感が僕を襲った。
ネド(僕)は、意識を失った。
ケネス宇宙軍宇宙艦ギガは、このデルタ星の周回軌道上に、透明スクリーンをかけた状態で旋回していた。
いつものように、ネドの上空に、透明スクリーンで隠したカメラを飛ばして、上空の宇宙から、ネドを見ていた。
ギガのコントロールルームの日常の雰囲気を最初に壊したのは、ネドを医療モニターでみていたドクター、マシアスであった。