乗り物は、元来た道を引き返したが、交渉が行われた建物から見えない位置まで来ると、別の方向に曲がり、 草地側からも、交渉が行われた建物からも見えない位置にある、別の建物の前まで行って、いきなり止まった。
止まった途端、白い防護服を着て武装した軍人たちに取り囲まれ、銃を向けられた。
「出ろ!」
「出ろ!」
ミュール語で怒鳴られ、降下メンバーは外に出た。
「これはどういうことですか」
と言ったケネス星商務省副長官ルコの声が周りに響いた。
「うるさい、黙れ!」
ガシ
ルコが銃で殴られた。
ルコが倒れるのが見える。
ミュール宇宙軍副司令官と言われた人物は、さっと建物の中へ消えた。
防護シールドに覆われているため、ルコは大丈夫だろうが、ネドはもう、恐怖に思考が停止していた。
「こっちへ来い!」
「こっちだ!」
「早くしろ!」
取り囲んだミュールの軍人に銃で背中を押されて建物の中へ追いやられた。
ケネス星のメンバー全員が、建物の中へ入った。
取り囲んだ兵士が、ケネスの上陸メンバー全ての持ち物を奪った。
と言っても、サンプルを入れてきたバッグと資料くらいなものである。
左前腕の通信装置は当然のことながら、見破られない。
銃で追い立てられて、建物奥の部屋へ、5人全員が次々と入れられた。
通路脇の部屋の中の一角が鉄格子で囲まれている。
そこにケネス上陸メンバーは留置されたのである。
この部屋の天井近くには、監視カメラが設置されている。
キャプテン、キースは部屋の中をざっと見渡した後、身振りで全員に座るように合図をした。
キースはさっとネドに近寄り、ネドの耳元で、
「心配しないで。大丈夫だから」
とささやいた。
座ってすぐに、ネド以外の全員が、カメラに見えないようにしながら、左前腕のケネスの器械を触って、何やら小声でしゃべり始めた。
キャプテンはおそらくギガのシリス副長に連絡しているのであろう。
商務省副長官ルコは、おそらく商務省のフェレル長官と話しているのか。